声を閉じ込めた少女時代 〜歌うことは好きだった。でも、その先にはいけなかった〜
私は幼い頃から歌うのが大好きでした。
初めて人前で歌ったのは小学1年生。担任の先生に促され、教室で歌ったのが最初でした。
でも、同級生に冷やかされ、胸がすっと冷たくなるのを感じました。
その後、父の社員旅行で訪れた宮崎・新田原古墳群へのバス旅行。
父に回ってきたマイクが私に渡され、思い切って歌を歌ったのです。周りの大人たちが笑顔で聴いてくれたあの瞬間、私は「歌っていいのかな」と思い始めたのを覚えています。
けれど、母は人前で目立つことをとても嫌う人でした。
「とびあがり(宮崎弁で“目立ちたがり”)」という言葉で私をたしなめ、
「人前で何かをするのは良くないこと」だと、まるで“躾”のように刷り込まれました。
それ以来、歌は「人に聴かせるもの」ではなく、「自分の中だけのもの」に変わっていきました。
カラオケでは誰もいないときにそっと歌い、誰かが来るとマイクを置く。
そんなふうに、私は歌を心の奥に隠して生きてきたのです。
